宮崎大学医学部附属病院 地域総合医育成センター

三浦 拓

初めに

2025年問題(団塊世代が75歳以上となる)が叫ばれて久しいですが、今年、平成27年は医療提供体制変革元年です。新法施行後、いよいよ地域医療構想が始動し、「機能」の観点から病院を病棟単位で定義づける時代が来ます。

翻って、医療の最重要資源たる医療人材の2025年問題への対応はいかばかりでしょうか。

新医師臨床初期研修の開始から10年を経て、一部ストレート方式回帰がありつつも、未だスーパーローテート方式が支配的な市中病院プログラムに人気があるのは、時代に敏感な医学生の本音を投影しているといえます。

初期研修の理念の一つである「プライマリ・ケアの基本的な診療能力を修得する」は高齢化著しい我が国において、質の高い医療提供に欠かせない能力を謳っています。後期高齢者においては「大腸癌だけ」とか「腹部大動脈瘤だけ」などということは稀で、多くは高血圧疾患、糖尿病、循環器疾患既往などの複数疾患を抱えています。

三浦先生1

さて、初期研修必修化により、複数の疾患領域にまたがる症例を診ることができるようになりました。これで2025年を迎え撃てるでしょうか。否。ここまでは「高齢者医療への対応」といういわば質の問題でした。2025年に襲うのは圧倒的な「数」の問題です。

75歳以上人口を追ってみましょう。2005年時点でその数1200万人弱、その後10年間で480万人増加しています(対全人口割合:9.1→13.0%)。さらに2025年までの10年間の増加はなんと530万人(同:13.0→18.1%)。20年で約2倍、これほどの増加は最初で最後、まさに未曾有の事態です。それに対して医師の増加数は全体30万人に対し、4千人/年。平成20年より増枠となった入学定員効果を加えても実に微々たる増加率といえます。

この圧倒的な数を受け止める方法として、「分業」を提言します。「分化」ではありません。幅広い疾患領域をカバーする能力を持ち、外来で複数疾患を管理し、入院では専門家にコンサルトしつつ、社会的背景を加味して入院後の生活まで描く。8割程度の比較的コモンな症例を受け持ち、臓器別専門医に専門家たる診療を依頼するという分業です。そんな総合診療医が不可欠だと考えています。専門医は地域基幹病院に配置し、中小病院、診療所に配置された総合診療医とのネットワークにより「地域を診る」、人的効率の高いシステム作りが急務です。

これまでと現在

「人を診たい」の思いで、とにかく症例数の多い徳洲会グループで研修をスタート。「24時間365日」の救急は基礎作りには最高の環境でした。新生児から看取りまで、1年間で経験を積み、2年目は離島医療に旅立つという大変貴重な経験でした。学生時代より志していた小児科医を目指し、都内に移りましたが、これまた学生時代より志していた医療政策への興味が再興し、シンクタンク的機能を持つ病院経営コンサルティング企業へ転職しました。全国各地の、地域ニーズに対応しながら持続性を高めようとする経営者を加勢すべく、データ分析と病院行脚の日々と、ビッグデータを用いた政策研究、米国研究者との親交は、それまでと全く異なる視点を与えてくれました。データの示す国内医療のバラつき、政策の素は地方に宿り、モデルケースが中央を動かします。

三浦先生2

総合診療こそ来る時代の唯一解ということで、宮崎に帰ることを決めました。ここ宮崎で総合診療医育成のモデルを作り、良質な地域医療と医療者の負担軽減を図り、さらに全国への波及を目指します。

串間市民病院で診療を開始していますが、その症例の多彩さは期待を凌駕します。じっくりと症例に関わりながら、研修医、学生の教育に貢献し、手術室で外科系手術手技を吸収します。さらなる一歩として予防啓発や訪問診療を企画します。全てが教材の環境で、「地域とのつながり」をテーマに、日々診療しています。